第1回(2008.8)

借地人Aは地主Bから旧借地権で土地を借り、A所有の建物に長く住んでいたが、老朽化したため建て替えの承諾にお願いに行った際、地主Bから、『承諾料の請求の替わりに50年の定期借地権で再契約をしよう』と持ちかけられた。
保証金も取らず、地代も今までの更新内容を引き継ぐとの事で、子供に財産を残さない主義の借地人Aの理にもかなう為OKしたいと考えた。
A・Bとも問題は起きないか?

旧借地権を設定していた場合に、借地上の老朽化した建物を取り壊し、新たに建物を新築した上、50年の定期借地権を設定するというケースですが、旧借地契約を定期借地契約に切り替える合意は無効とされています。
その理由は、旧借地権を設定していた土地は現在も旧借地法が適用されており、定期借地権の根拠法である借地借家法は適用がないからです。
これを有効に行うためには、まず当事者間で旧借地契約を合意解約し、旧法上の借地権を消滅させた後に、当事者間で新たに定期借地権を設定するということになります。
旧借地権を合意解約する際に、金銭的な補償を一切行わないことが有効か否かについては、見解がわかれるところだと思います。

第2回(2008.9)

会社Aは地主Bから20年の事業用借地権で土地を借り、店舗を建てようとしているが、会社Aは事業が将来順調ならば環境や交通至便等から出来れば長く借りたいと考え、『甲・乙協議の上、再契約できるものとする』という文を最初から公正証書に記載したいと考えているが可能か?
また、最初の公正証書には記載されてはいなかったが、存続期間の満了前に再度新しい借地権を設定する旨の予約を結ぶ事は可能か?

(1)「甲・乙協議の上、再契約できるものとする。」との条項は、あってもなくても法的効力に変わりはありません。
なぜなら「協議の上、再契約できる」との条項は、協議が成立しない限りは(即ち、甲と乙が再契約を合意しない限り)再契約ができないということですから、合意しない限り再契約ができないというのは当たり前のことであって、契約書に盛り込む意味がありません(但し、誤解に基づくものと思われますが、「協議の上、再契約できる」という条項があれば、協議をして再契約をしてもらえるものと考える当事者が少なくなく、実際にはこの条項でスムースな解決が図れている場合もないわけではありません。相手方に法的知識があればこの条項は何の役にも立たないことになります。)。

(2)最初の公正証書には記載されていなくとも、存続期間の満了前に再度新しい借地権を設定する旨の予約契約を締結することは法律では禁止されておりませんので、十分可能であると考えられます。

第3回(2008.10)

50年の一般定期借地権を結んで借地人AはA所有の建物を建てて住んでいたが、設定後35年目に火事で建物を消滅した為、また高齢で再築して土地を使用する意欲も資力も無い為、借地人Aは一方的に定期借地権を放棄したいと考えたが問題はないか? また、上記の場合での賃借権の放棄の場合と地上権の放棄の場合との違いはあるのか?

(1)定期借地権の存続期間中に建物が火災等で滅失し、借地人が再築の意欲も資力もない場合に一方的な権利の放棄ができるか否かということですが、まず定期借地権設定契約に期間内解約条項があれば、この規定に従って解約をすることになります。期間内解約条項がない場合は、地主と協議の上、合意解除をすることになります。
ただし、期間内解約条項がなく、地主が合意解除に応じない場合には、定期借地権の一方的な放棄ができるかということが問題になります。権利に関する一般的な原則として、権利の放棄は権利者の自由と考えられています。しかし、その場合は権利を放棄することは可能ですが、定期借地契約の場合には権利だけではなく義務(地代支払義務)がありますので、その義務は当然には放棄できないことになります。したがって、結論としては、定期借地権の一方的な放棄は不可能であり、合意解約を取り付けるしかないと考えられます。

(2)賃借権の放棄と地上権の放棄の差があるのか否かということですが、賃借権において一定期間ごとに賃料を支払う場合には、上記のとおり放棄は不可となりますが、地上権において一時金を支払い済みで地代が発生しない地上権の場合には、放棄が可能な場合があり得ると思われます。

第4回(2008.11)
「定借用地における根抵当権の設定」について、3つの質問をします。

定期借地予定地に土地所有者側の根抵当権が設定されているが、このまま土地を借りた場合、当方の融資予定銀行に影響はあるか?
また借地期間中に当方に起こり得る事柄があるとすればそれは何か?

根抵当権が設定された土地を、抵当権が設定されたままの状態で借地すると、将来、地主が金融機関に対する返済が滞り根抵当権が実行されると(定期借地権を設定した土地が競売にかかる)、土地に設定された抵当権は定期借地権に優先していますので、定期借地権は契約期間中であっても消滅してしまいます。
このため、定期借地の実務では、底地に抵当権が設定されている土地については、定期借地権は設定していないということが絶対の原則になっています。
お問い合わせの、「当方の融資銀行に影響はあるか」との点ですが、当然ながら借地人側の融資銀行は、底地に根抵当権が設定されていれば融資に応じませんし、万一、審査の甘い銀行があったとしても、地主が金融機関に対する返済が滞って根抵当権が実行されると、借地人側は建築した借地上の建物は解体撤去して土地を明け渡さなければならなくなります。


土地所有者側に根抵当権をはずして欲しい旨を話してもよいのか?

当然ながら、根抵当権がついたままでは定期借地権の設定は絶対に出来ない旨は地主にはお話しています。
実務上は、地主に別担保を地主側の金融機関に提供して当該土地の根抵当権をはずしてもらうことは可能かというお問合せはしています。


相手方が新たに根抵当権又は抵当権を設定しようとした時、事前に連絡があるのか?
拒否することはできないのか?

定期借地権を設定した後に、地主が底地に根抵当権等を設定する際に事前に借地人側に連絡がくることはありません。それは、実務上は前記のとおり、定期借地権を設定する土地には抵当権が設定されていないからで、定期借地権設定後に地主が底地に抵当権を設定しても、この場合には定期借地権のほうが抵当権に優先しますので、仮に抵当権に基づく競売が実行されても、定期借地権はそのまま存続するため、借地人側に法的な不利益がないからです(競売により地主が交替することにはなりますが、土地を使用させる債務の履行には問題がありません。)。
逆に、本件のように先行する根抵当権が存在する場合には、定期借地権を設定した者は、地主側の根抵当権が実行されれば、何時でも建物を取り壊して退去する意思で土地を借りたとしか評価されませんので、後の抵当権の設定を拒否することもできません。